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皮膚のバリアについて

 執筆者: 加治佐 卓也
医学博士・形成外科専門医

この美容液の成分はどれくらい肌に浸透するのだろう?

そう思ったことはありますか?

実は、皮膚にはバリア機能があり、意外と市販の美容液などの成分は入っていきません。

ここでは、皮膚のバリア機能とどのようにすれば有効成分を導入できるかについて解説いたします。

皮膚のバリア機能のメカニズム

バリア機能がある皮膚の層は?

表皮の「角質層」にバリア機能があります。

皮膚には表皮と真皮があります。
表皮の角質層は、角質細胞と細胞間脂質で構成されています。
また、細胞間脂質は水と脂質からなる「ラメラ構造」というミルフィーユのような層を形成しています。
角層構造はしばしばレンガ(角質細胞)とモルタル(細胞間脂質)の関係に例えられます。

このラメラ構造により、外からの有害物質や刺激から生体を守るバリア機能ができます。

バリア機能により有効成分が皮膚に浸透しにくくなる

バリア機能にはデメリットもあります。

有用な医薬品や化粧品成分が皮膚に塗布されても、角質層に浸透することは妨げられます。
たとえ浸透できたとしても、浸透速度は非常に遅くなります。

また、皮膚に適用される化学物質の分子量と極性が浸透速度と深さに影響を与えます。
分子量が 500 Da 以上のある程度大きいサイズの化学物質は皮膚に浸透しにくくなります 。

皮膚に物質を浸透させる美容医療の方法は?

美容物質を塗ってもなかなか皮膚に入っていきません。
そこで、より浸透させるために以下の方法があります。

エレクトロポレーション

エレクトロポレーション(電気穿孔法)は、電気パルス(電気エネルギーをミリ秒程度かつ高電圧を皮膚に負荷)で細胞膜に孔を空けて、物質を導入する手法です。

イオン導入や超音波導入では難しかった高分子有効成分などを肌へ導入できます。

エレクトロポレーションの詳細≫

イオン導入(イオントフォレシス)

電気エネルギーを利用した方法です。
皮膚の離れた2点に陽極と陰極をセットします。

各薬物特有の電気的性質(プラスまたはマイナスに帯電など)を利用して、移動させ、経皮吸収させます。

イオン導入の詳細≫

マイクロニードル

1998年に報告された皮膚透過促進の一つです。

微小な針を用いて、皮膚透過最大のバリアである角層に小さな穴を空けて、物質を浸透させる方法です。

マイクロニードルは、低分子物質だけでなく高分子物質の透過量増加が期待できます。

注射

注射により直接美容物質・薬剤を皮膚を通して導入できます。

注射方法としては、通常の皮下注射や水光注射があります。

水光注射とは、スタンプ式の注射の器械を使った方法です。

その他の物質を浸透させ方法は?

皮膚のバリアを薄くする方法として、メントール,エタノール等による塗布は古くから使われています。

その他、界面活性剤、脂肪酸、脂肪酸エステルなどにも透過促進能があると報告されています。

その他、薬物の構造を化学的に修飾して、透過しやすくするプロドラッグ化という化学的促進法があります。

毛穴から物質は浸透するか?

毛などの付属器官は、たしかに皮膚実質よりも物質を通しやすいです。

しかし、面積の割合が皮膚全体の0.1%程度なので、ほとんど影響はありません。

参考文献

Chem Pharm Bull. 2022 Jun 1;70(6):454-457.

Yakugaku Zasshi. 2009 Dec;129(12):1453-8.